【産休中の健康保険・厚生年金保険料は?】社会保険料免除ルールを詳しく解説!

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この記事では、産前産後休業期間中の社会保険料免除制度の詳細について、初心者でもインプットしやすいよう、わかりやすく解説しています。

<この記事はこんな方におすすめです>

✅産休・育休制度を知っておきたい会社経営者の方

✅初めて産休・育休手続きをする担当者の方

✅これから産休・育休の利用を考えている社員の方

✅産休・育休制度の内容を、おさらいしたい方

✅産休・育休制度の最新情報を知りたい方

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  2. 休業申出書・育休取扱通知書等、各種必要書面の準備
  3. 切迫早産・切迫流産等発生時の傷病手当金(*)、帝王切開時の高額療養費限度額適用認定(*)申請
  4. 出産手当金(*)・育休給付金・社会保険料免除等、産休・育休に必要な全ての申請(手続代行)
  5. 社会保険料引き落しの停止や地方税徴収方法変更等、給与支払事務の変更手続
  6. 職場復帰後の「休業終了時 社会保険料特例改定」・「厚生年金保険料 養育期間特例適用」申請(手続代行)

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CLASSY. 2024年2月号(12/27発刊) 「“私”のアドバイザー」欄に掲載されました

はじめに

「産休中や育休中は社会保険料が免除になる」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?

ただし、この社会保険料免除制度。よくよく確認してみると・・・

  • 実際の産休(産前産後休業)期間と免除期間が同一でなかったり
  • 産休中と育休中で扱いが異なっていたり

と、気を付けておかなければならないポイントがいくつかあります。

令和4年4月1日より育児介護休業法が改定され、企業規模の大小を問わず、本人又は妻の妊娠・出産を申出した労働者に対して育休取得の意向確認、制度内容の個別周知を行うことが義務化されました。

この定めは、あくまでも育休制度についてのものではありますが、産休の取得を希望する労働者から申出があれば、当然、産休に関する制度内容についても同時に説明すべきものであると捉えるのが自然ではないでしょうか。

よって、会社手続き担当者の方は育休に関する制度のみならず、産休関連の制度についても、社員の方へ誤った説明をしてしまわないよう、事前にしっかり理解しておく必要があります。

ぜひとも、この記事をご活用いただければと思います。

もちろん、これから産休を取得予定の社員の方が、ご一読いただいても結構です。

会社の立場から制度を理解できますので、わかりやすいと思います。

なお、ここでは、船員保険に加入する方、および共済組合等に加入する公務員の方は除いて解説しますのでご了承下さい。

免除対象となる社会保険料の種類

まずは、社会保険料の定義についてですが、一言で「社会保険料」と言いましても、広義の意味では・・・・

a.狭義の意味での「社会保険料」である、国民健康保険料(税)・健康保険料・介護保険料・国民年金保険料・厚生年金保険料

に加えて・・・

b.雇用保険料や労災保険料といった「労働保険料」

を含める場合があります。

産休期間中に免除となる「社会保険料」は、上記a.狭義の意味での「社会保険料」のみを指し、雇用保険料や労災保険料は含みませんので注意して下さい。

なお、上記の中の国民健康保険料については、市区町村を通じ加入する国民健康保険も含め、令和6年1月から全面的に免除制度が開始となります。(*)

(*)
同種同業の組合員で組織された国民健康保険組合や、ごく一部の市町村国保に加入している労働者の方には、既に独自の保険料免除制度が適用されている場合があります。

(*)
令和6年1月以降、国民健康保険料・国民年金保険料ともに、産休期間については免除制度が整うこととなりますが、いずれの保険料も育休期間中については免除対象とはなりません。
育休期間中の保険料が免除となるのは、勤務先を通じて加入する健康(介護)保険料・厚生年金保険料のみとなります。

産休期間中の雇用保険料と労災保険料

産休期間中のb.「労働保険料」の取扱いについても念のため、触れておきます。

雇用保険・労災保険については、会社が毎年1回保険料を申告し、一括または分割で支払います。

具体的には、原則6/1~7/10の間に、前年4/1~当年3/31まで1年間の賃金支払総額を集計し、保険料を算定のうえ申告します。

さて、ここで重要なポイントとなりますが・・・

この申告の際、産休対象者の有無は考慮されません。

ということは、結果的に保険料免除の対象外であるということになります。

雇用保険料については、賃金支払いの都度、労働者の本人負担分を会社が預り金として徴収しておき、申告後に会社負担分と合わせて納付します。

産休期間中であっても、給与や賞与など、賃金を支給する場合は、通常通り徴収が必要となりますので注意が必要です。

雇用保険料については、産休期間中であるか否かに関係なく、賃金の支払いがあればその都度、徴収の対象

となることを覚えておいて下さい。

このことは育休期間中であっても同様です。

なお、労災保険料は会社のみ負担となっていて労働者負担分はありませんので、このような手続きは発生しません。

免除を受けるには申請が必要


産休期間中の社会保険料免除を受けるためには申請が必要となります。

具体的には、会社員として健康保険・厚生年金に加入している場合は、勤務先を通じて、日本年金機構もしくは加入先の健保組合に対して、産前産後休業取得者申出書を提出します。

この申出書は産休期間中に提出しなければなりませんので注意して下さい。

申請のタイミングは、出産前でも出産後でもよいのですが、出産日が確定しないと保険料免除期間も確定しないため、出産後に申請するのが一般的です。
(この点については、後ほど解説します)

出産前に申請した場合は、予定日どおり出産した場合を除き、確定後の産前産後休業期間について、変更申請が必須となります。

なお、出産日の到来を待って申請を行った場合、産前期間中の社会保険料については、免除の申請が承認となる前に日本年金機構もしくは加入先の健保組合から納入の告知が行われてしまうことが通例となります。

この場合、いったんは本来免除となるべき保険料額を含めて納入することとなりますが、その翌月以降の保険料が減額調整されますので、トータルで支払う保険料の額に多い少ないの差は生じません。

国民健康保険・国民年金に加入している場合は、加入先の市区町村窓口もしくは国民健康保険組合の定めにしたがい、加入者本人が手続きを行います。

なお、市町村国保も含めた国民健康保険料の免除制度は、令和6年1月からの開始となります。

国民年金保険料の免除制度については、既に平成31年4月から施行されています。

本人負担分・会社負担分ともに免除対象となる

勤務先を通じて加入している社会保険料の場合、その免除期間中は、労働者本人負担分、会社負担分のどちらも免除となります。


標準報酬月額(≒給与平均額のイメージ)の約15%ずつが免除となりますから、金額的にも非常に大きいです。

なお、これらは育休期間中についても同様となります。

賞与についても保険料免除の対象となる


勤務先を通じて健康保険・厚生年金に加入している場合で、賞与が支給された場合はどうなるでしょうか?

この場合も、労働者本人負担分・会社負担分ともに、健康(介護)保険料・厚生年金保険料を合わせて、標準賞与額(*)にかかる保険料の全てが免除となります。

(*)税引前の賞与総額から千円未満を切り捨てた額(健康保険は年度累計573万円・厚生年金保険は月あたり150万円が上限)

また、この場合・・・

賞与支給額の査定対象期間がいつであるかは問いません

産休期間中に支給されたか否かでのみ決定します。

厳密には、産休期間=保険料免除期間ではないのですが、ひとまず、このように理解しておいて下さい。

ちなみに、少し脱線しますが・・・

産休の取得を理由に賞与を支給しないことは、男女雇用機会均等法第9条で禁止されています。

賞与支給の目的には、今後の成績に対する期待も加味されるため、妊娠や出産を控えた従業員の賞与を減額査定することは、一概に違反とまでは言えません。

ただし、不利益取扱いにならない様、合理的な説明が必要となります。

保険料免除期間中の年金額計算


勤務先を通じて健康保険・厚生年金に加入している場合で、 保険料が免除されている間については・・・

休業直前の標準報酬月額等級に基づき計算した保険料を納付したものとみなされます。

よって、将来受取る年金が減額される心配はありません。

産休期間=免除期間ではない

さて、ここまで、「産休期間中は社会保険料が免除される」という言い方をしてきました。

しかしながら・・・

実際の「免除期間」は「産休期間」と同一ではありません。

どういうことなのか見ていきましょう。

保険料免除期間の決まり方


まず、免除期間はどのように定められているか解説します。

なお、ここからの解説は、勤務先を通じて健康保険・厚生年金に加入している場合の保険料免除制度を対象に行っていきます。

国民健康保険、国民年金に加入している方の保険料免除制度については以下の章をご参照下さい。

出産前後の国民年金保険料免除制度について

国民健康保険料の免除制度もスタートする(令和6年1月1日~)

健康保険法・厚生年金保険法では、社会保険料免除期間について・・・

産前産後休業を開始した月から、終了日の翌日の属する月の前月分まで

と定めています。

保険料免除期間は月単位で決定

1つ目のポイントは、月単位で決定される点です。

月単位で免除月が決まりますので、日単位で定まる産休期間とは当然ながら一致しません。

免除開始は休業開始月から

2つ目のポイントは、「休業開始月から」免除となることです。

仮に産休開始日が月末日であっても、その月の保険料は徴収しないこととなります。

産休を予定している社員の方がいる場合は・・・

保険料徴収をした月と同じ月内に、後から産休を開始すると、返金等の後日清算が必要になる場合があります

先回りして、注意が必要です。

月末日にかけて産休していない月は免除されない

3つ目のポイントは、「終了日の翌日の属する月の前月まで」免除となることです。

仮に、産休終了日が27日などの月末近くであっても、その月の保険料は徴収しなくてはならず、免除期間はその前月までとなります。

ただし、産休終了日が月末日の場合は、その月の保険料についても免除されます。

「月末日の翌日の属する月の前月」は・・・当月ということです。

つまり、月末日にかけて産休していない月は免除対象とならないということです。

ちなみに、この考え方は、育休期間中の社会保険料免除にも適用されます。
(令和4年10月以降は、法改正により、同一月内に完結する育休でも免除対象となる場合があります)

また、社員入社時や退職時の社会保険料支払いについても考え方は全く同じです。

以下に参考として記載しておきます。

資格取得時・喪失時の保険料について(参考)

健康保険料・厚生年金保険料の支払いは・・・

被保険者資格を取得した日の属する月の分から

被保険者資格を喪失した日(=退職日の翌日)の前月分まで

となっています。

保険料免除期間中の給与引き落し停止手続きはどうやる?(リンク)


ここまでの解説で、産休期間中の社会保険料免除の仕組みについて、基本的なところは理解できたかと思います。

とはいっても、実務を担当する方は「実際どのように給与からの保険料徴収を停止したらよいか?」の説明がないと気がかりなのではないでしょうか?

記事が多くなり過ぎますので、ここでは解説しませんが、以下のページへのリンクを貼らせていただきますので、ぜひ参考にして下さい。

会社役員の場合、産休中は社会保険料免除となるが、育休中は免除されない

代表者や役員が会社を通じて加入している健康(介護)保険料・厚生年金保険料については・・・

産休中は免除対象になります

が・・・

育休中は免除対象になりません。

なぜ、このようなルールになっているのでしょうか?

できるだけ、わかりやすく解説します。

なお、ここでの会社役員からは、使用人兼務役員を除きますのでご注意ください。

会社役員も産休中の社会保険料免除はOK


まずは、会社代表者や役員が産休した場合の健康(介護)保険料・厚生年金保険料の免除がどのような背景で適用されているか解説します。

上記、産休期間中の社会保険料免除は、健康保険法・厚生年金保険法に定めがあります。

この中で、同法は・・・

産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間

を「産前産後休業期間」としています。

この期間は、あくまでも健康保険法・厚生年金保険法で定めるものであり、労働基準法で定める産休期間とイコールではありません。

よって、労働基準法が適用されない会社代表者や役員であっても、健康保険法・厚生年金保険法の産休期間に該当する休業をすれば、保険料が免除されることになっています。

会社役員の育休中、社会保険料免除はNG


健康保険法・厚生年金保険法は、育休期間中の社会保険料免除についても定めています。

ただし、この中では育休期間について、「産前産後休業期間」のように個別の定めをしていません。

つまり、ここでの育休期間は、育児介護休業法を根拠とした子が1歳(延長の場合は最長2歳)になるまでの育児休業期間、および子が3歳になるまでの育児休業に準ずる期間とイコールになっています。

よって、育児介護休業法が適用されない会社代表者や役員には、社会保険料免除も適用されないことになっています。

妊娠85日以後の流産・人工妊娠中絶の場合も免除対象となる

労働基準法では、「出産」について以下のように定めています。

  • 妊娠85日以後の出産(早産を含む)
  • 妊娠85日以後の死産(流産)
  • 妊娠85日以後の人工妊娠中絶

上記に該当した日は全て出産日とみなしますので・・・

その産前6週(多胎14週)と産後8週の間に取得した産休期間

についても、勤務先を通じて加入している健康(介護)保険料・厚生年金保険料は免除の対象となります。

念のため復習ですが、実際に免除対象となる期間は・・・

産休を開始した月の分から、終了日の翌日の属する月の前月分まで

ですので、注意して下さい。

令和4年10月より保険料免除ルールが改定されたのは育休の場合のみ

さて、ここから先は、少し細かい制度内容について見ていきましょう。

以前の解説で、勤務先を通じて加入している健康(介護)保険料・厚生年金保険料の「免除期間の考え方は、産休期間も育休期間も同様となっている」と触れました。

休業開始日が月末日でも、その月の保険料は徴収しない

というルールがありました。

が、これが育休期間に適用される中で、少し悩ましい問題を引き起こしてきました。

月末1日だけ育休を取得させて、その月に賞与を支給すれば社会保険料がタダになる!?


このような、裏技のような話を聞いたことはありませんでしょうか?

産休の場合はその性格上、1日だけ取得するというのは明らかに不自然ですので、このようなケースは発生しないでしょう。

ただし、育休の場合は、夫である男性社員等が1日だけの取得を希望しても不自然ではありません。

このため、ルール上は、(もっぱら保険料削減を目的とした)裏技のような申請をできなくもありません。

少し話は脱線しますが・・・

育休期間中の社会保険料免除においては、子が1歳になるまでの育休期間に加え、子が3歳になるまでの養育期間中、育休に準ずる休業をした場合についても免除期間に含めることとされています。

免除対象となる子の年齢も拡充されている中で、

「まずは、3歳未満の子がいる社員を探して・・・」

ということが問題視されてきたということです。

育休期間中の社保免除ルール改定内容


上記の問題を背景として、令和4年10月以降は、

連続1カ月超の育休を取得した場合のみ、賞与からの保険料徴収を免除とする

よう法改正されました。

ただし、この法改正は、あくまでも育休取得者に限った話です。

「産休開始日が月末日でも、その月の1日以降に支払われた賞与から保険料徴収しない」

という産休期間中の保険料免除ルールに変更はありませんので混同しないように注意しましょう。

また、この法改正は賞与に限った話であり、給与に対する保険料免除ルールは育休期間中であっても、上記同様に変更されていません。

ですので、賞与はダメでも、給与の保険料免除をねらって・・・

という裏技まがいの封印まではルールが及んでいないのかもしれません。

ちなみに、同時に行われた法改正として・・・

育休開始日と育休終了日の翌日が同月内の場合であっても、14日以上の育休期間があれば、保険料免除の対象とする

ルールが新設されました。

このルールは、出生時育児休業制度(産後パパ育休制度)の新設に伴い設けられています。

こちらについても、育休に限ったルール新設であり、産休期間中の保険料免除ルールに変更はありませんので混同しないよう注意しておきましょう。

なお、出生時育児休業制度(産後パパ育休制度)について知りたい方は、こちらをクリックして下さい。↓

出産日が確定しないと免除期間も確定しない

さて、もう一つ、しっかり確認しておくべきことがあります。

それは、表題にもあります通り、勤務先を通じて加入している健康(介護)保険料・厚生年金保険料については、出産日が確定しないと保険料免除期間も確定しないということです。

いったいどういうことなのでしょうか?

さきほど、健康保険法・厚生年金保険法で定める産休期間は、労働基準法で定める期間とイコールでないことを解説しました。

もう一度よくみてみると・・・

産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間

が産休期間となっています。

ここでの大きなポイントは、産休期間を出産予定日からではなく、実際の出産日から起算している点です。
(ただし、予定日より遅く出産した場合は、出産予定日から起算する定めが別にあります)

労働基準法の産休期間は、出産予定日から起算していますので、予定より早く出産すると短くなります。

対して、健康保険法・厚生年金保険法で定める産休期間は、実際の出産日から起算しますから短くなるとは限りません。

何を言いたいかというと・・・

予定日より早まった日数を当初の産休開始日から繰上げて、再判定した中に・・・

「妊娠・出産のため労務に服さなかった」日があれば、その日も産休期間に含められる

ということです。

つまり、出産日が確定しないと、健康保険法上の産休期間は確定しないため、保険料免除期間も確定しないということです。

例えば、当初産休開始日の直前に、年次有給休暇や所定休日、欠勤日をくっつけているような場合がこれにあたります。

年次有給休暇等も含める点に注意してください。

なお、これらの日が、当初産休開始日と連続してなければならないルールはありません。

ただし・・・

「妊娠・出産のため労務に服さなかった日」でなければ、産休期間に含めることはできません。


それでは次に、予定よりも遅く出産した場合はどうなるでしょうか?

この場合は・・・

出産が予定日より後になった場合については、当初の出産予定日から産前休業期間を数える

ルールとなっています。

つまり、予定より早く出産した場合のように、産前休業期間の再判定を行う必要は生じません。

ただし、予定日から遅れて出産した分、産休終了日が繰り下がりますので、

出産予定日前に保険料免除を申請済であれば、免除終了日の変更申請が必要になります。

ちなみに、この考え方は、産休期間中の収入補助である出産手当金の支給対象日を決定する際にも同じく適用されます。

当初予定より、免除対象月が繰り上がる場合に注意


ここまで、勤務先を通じて加入している健康(介護)保険料・厚生年金保険料については、出産日が確定しないと免除期間が確定しないことについて解説しました。

では次に、実務上、気をつけておくべきケースを見ていきましょう。

保険料免除期間は月単位で決定されますので、注意しておかなければならないのは以下のケースとなります。

それは・・・

月をまたいで産休開始日が早まった場合は、保険料免除の開始月も、ひと月前に変更となる

ケースです。

この場合・・・

すでに社員の方から徴収した保険料を返金する等、後日清算しなければならない場合があります

ので注意して下さい。

また・・・

出産予定日前に保険料免除を申請済であれば、期間変更の申出も必要になります。

月の前半に産休を開始した社員の方がいましたら、その前月中に、妊娠・出産のため、休暇または欠勤した日が無いか?確認しておきましょう。

もちろん、前月が賞与支払月であれば、賞与から徴収した保険料についても免除の対象となりますので、忘れずに対応して下さい。

出産前後の国民年金保険料免除制度について

さて、ここからは、自営業者やフリーランスの方々など、市区町村の窓口や同業者組合を通じて国民年金に加入している方の保険料免除制度について見ていきましょう。

もともと、産休中の年金保険料免除制度は、厚生年金のみに適用されてきました。

よって、自営業者やフリーランスの方々が妊娠・出産のために休業しても、国民年金保険料は免除されてきませんでした。

そこで、2019年4月以後、出産前後の国民年金保険料免除制度が新設されました。

就労していない人も免除対象になる


この制度の大きなポイントは、

働いているか否かにかかわらず国民年金保険料の支払いを免除とする

点です。

世帯収入による制限もありません。

ただし・・・

対象となるのは、国民年金1号被保険者として国民年金保険料を納付している人

に限ります。

学生であっても、国民年金保険料を納付していれば免除の対象となります。

免除期間は出産予定日・出産日のいずれか一方により決定


具体的な免除期間は・・・

出産予定日、または出産日が属する月の前月から4ヵ月間

となります。

多胎妊娠の場合は・・・

出産予定日、または出産日が属する月の3か月前から6か月間

となります。

この場合の出産には、妊娠85日以後の死産・流産・早産を含みます。

なお、出産前に申請(*)した場合は「出産予定日」を基準とし、出産後に申請した場合は「実際の出産日」を基準に免除対象月が決定されます。
出産予定日の属する月と、実際の出産日の属する月がずれたとしても、(原則)後から免除月の変更は行いません。

(*)免除申請は、出産予定日の6か月前から行うことができます。

4か月分の保険料が免除された場合(令和6年度保険料月額)16,980円×4=67,920円が免除となります。

上記で保険料免除が認められた期間は保険料を納付したものとみなされます。
よって、将来、年金受給額が減る心配はありません。

なお、国民年金保険料に上乗せして納付する「付加年金」保険料等については、上記の免除対象とはなりませんのでご注意下さい。

国民健康保険料の免除制度も開始となった(令和6年1月1日~)

今まで、業界団体等で組織する国民健康保険組合(国保組合)では、独自に保険料免除の制度を設けているケースがありましたが、各市区町村が運営する国民健康保険制度には、ごく一部の自治体を除き、出産前後の保険料を免除する制度はありませんでした。

令和6年1月1日からは、すべての国民健康保険料について、出産前後の期間に対する保険料が免除されることとなりました。

免除となる期間


免除期間は・・・

出産予定日、または出産日が属する月の前月から4ヵ月間

多胎妊娠の場合は・・・

出産予定日、または出産日が属する月の3か月前から6か月間

この場合の出産には、妊娠85日目以後の死産・流産・早産を含みます。

以上については、国民年金保険料の免除制度と同内容となります。

また・・・

  • 出産前に申請(*)した場合は「出産予定日」を基準に免除対象月を決定すること
  • 出産後に申請した場合は「実際の出産日」を基準に免除対象月を決定すること
  • 出産予定月から実際の出産日の属する月がずれても、(原則)後から免除月の変更は行わないこと

についても、 国民年金保険料の免除制度と同内容となります。

(*)免除申請は、出産予定日の6か月前から行うことができます。

免除要件・免除対象者

  • 働いているか否かにかかわらず国民健康保険料の支払いが免除となること
  • 世帯収入による制限なく免除されること

についても、国民年金保険料の免除制度と全く同じです。

なお、

保険料免除の対象となるのは、国民健康保険に加入している出産する方ご本人分のみ

となりますが・・・

国民健康保険は、世帯主の方が世帯全体の保険料を一括して納付する仕組みとなっているため・・・

実際の保険料免除は、世帯主の保険料納付総額から、出産する方ご本人分の「所得割額」「均等割額」4カ月分(*)を減額することにより行われます。

(*)多胎出産の場合は6か月分となります。

育児休業期間中の国民年金保険料免除制度も検討されている(令和8年度の施行目標)

令和8年度の施行を目標として、フリーランス・自営業者等「国民年金1号被保険者」についても育児休業期間中の国民年金保険料を全額免除とすることが検討されています。

この免除制度は、育児休業取得の有無に関わらず「1歳になるまでの子を養育する父母全て」を対象とする方向で検討されており、所得要件や休業要件は設けない方針となっています。

産前産後休業期間中4カ月間の社会保険料免除が適用されている母親については、当該免除期間に引き続き9カ月間が免除対象月となる見通しです。

なお、免除対象月分については満額の基礎年金が保障されることとなります。

まとめ

今回は、産休中の社会保険料免除ルールについて解説してきました。

意外にも、気を付けておくべきポイントがたくさんあることに驚かれたのではないでしょうか?

手続きを進める際には、また再読し、ぜひ活用していただければと思います。

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