この記事は、産休・育休手続に不慣れな企業担当者の方でも迷わず対処できるよう、全7回に渡り各手続をスケジューリングし、ナビゲーション形式で解説しています。
<この記事はこのような方におすすめです>
✅初めて産休・育休手続きをする企業担当者の方
✅産休に続けて育休を取得する場合の手続きについて知っておきたい企業経営者の方
✅産休に続けて育休を取得する場合の手続きについておさらいしたい方
はじめに
「産休・育休」取得実績が乏しい企業の経営者・労務担当者の方は、社員から申出を受けた際、「何をすればよいのか?」すぐに分からず困ってしまうことがあるのではないでしょうか?
「産前産後休業」および「育児休業」制度の内容は多岐に渡り、行うべき手続きも非常に多いため、常にルールや手続き方法をインプットしておくのは、あまり現実的ではありません。
このため、手続きが必要となった際に「どのような手続きをすべきか?」と「いつまでにそれを行うべきか?」を順序立てて確認できる記事を執筆しました。
この記事では、「産前産後休業」および「育児休業」の手続きをリストアップし、スケジュール順にそのポイントを全7回に渡り解説していきます。
他の回をご覧になりたい方はこちらをご参照下さい。
この記事を活用するにあたっての注意点
この記事では、手続き時の「必要書類」について「書式」や「書き方」の解説はしておりません。
具体的な「必要書類」や「書き方」については、「全国健康保険協会」ページへの「リンク」を貼らせていただきましたので、そちらをご参照下さい。
また、船員保険に加入する方、および共済組合等に加入する公務員の方は除いて解説しておりますのでご了承下さい。
なお、この記事の解説対象となる方は、会社を通じて・・・
- 健康保険(「全国健康保険協会(協会けんぽ)」又は「健康保険組合」)
- 厚生年金保険
- 雇用保険
に加入している社員の方(使用人兼務役員を含む)となります。
上記に加入せず・・・
- 国民健康保険(国民健康保険組合を含む)
- 国民年金
に加入している社員の方
- 雇用保険に加入していない会社役員の方
は、この記事の解説対象となりませんのでご注意下さい。
また、雇用保険に加入している社員の方であっても・・・
- 産休開始日前2年間の合計加入月数が12か月に満たない方(*1)
- 退職予定の方
- 育児介護休業法で認める理由以外で「育児の為の休業」を取得した方(*2)
については、雇用保険から「育児休業給付金」を受給することができませんのでご注意下さい。
(*1)(*2)詳細については以下の記事をご参照下さい。
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- 休業申出書・育休取扱通知書等、各種必要書面の準備
- 切迫早産・切迫流産等発生時の傷病手当金(*)、帝王切開時の高額療養費限度額適用認定(*)申請
- 出産手当金(*)・育休給付金・社会保険料免除等、産休・育休に必要な全ての申請(手続代行)
- 社会保険料引き落しの停止や地方税徴収方法変更等、給与支払事務の変更手続
- 職場復帰後の「休業終了時 社会保険料特例改定」(手続き代行)
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産休開始前の手続き(後半)
この記事では・・・
- 従業員の方が出産に伴い「産前産後休業」を取得してから
- 子が1歳になるまで「育児休業」を続けて取得する
前提で、会社側の担当者が行うべき手続きをリストアップし、スケジュールに沿ってポイントを解説しています。
前回は、第1回として「産休開始前の手続き(前半)」について見てきました。
今回は、引き続き第2回として「産休開始前の手続き(後半)」の解説をしていきます。
1)休業期間中の地方税(住民税)納税方法確認
それでは、後半の始めとして、休業期間中の地方税(住民税)納税方法について見ていきましょう。
【産休・育休期間中の地方税(住民税)支払方法について】
地方税の支払いは、産休・育休期間中も、給与支給の有無にかかわらず発生します。
その一方で、出産手当金・育休給付金から地方税は引き落しできません。
そのため、休業期間中の地方税支払については、以下の方法が考えられます。
【休業期間中、給与からの引き落しができない場合】
産休・育休期間中について・・・
- 給与を支給しない場合
- 給与支給は行うが、地方税の引き落し額(特別徴収月額)を下回る場合
上記のケースに該当する場合は、資金不足のため地方税を給与から引き落し(特別徴収)することができません。
この場合、以下①、②いずれかの対応が考えられます。
①休業期間中の地方税を会社が立替払いする方法
休業期間中は、「特別徴収」による毎月納税分を会社が「立替え払い」しておき、本人が職場復帰した後に、給与支給のタイミング等で一括もしくは分割して精算します。
ある程度、休業期間が短い場合に行います。
②特別徴収を中止する方法
「特別徴収」中止の手続きを行います。
休業期間が長期に渡る場合に行います。
【特別徴収中止の手続き】
それでは、ここからは、上記②「特別徴収中止」の手続きについて、解説していきます。
なお、納税先の市区町村によって手続き方法が異なる場合があります。
詳細は、納税先の市区町村窓口または顧問税理士先生までご確認をお願いいたします。
まず「会社」は・・・
休業する「従業員の方」の「当年1月1日現在に居住していた各市区町村」
宛てに
「給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」
を提出し「特別徴収」を中止します。(休業開始後すみやかに会社が提出)
なお、上記「特別徴収」の中止を届出する際には・・・
「中止を開始した月の分」から「年度末分(5月末分)」までをどのように納付すべきか?
について、届出書面上に設けられた「以下の選択肢」にチェックを行うようになっています。
- 特別徴収中止前の最終回給与から、会社が一括徴収し、一括納付する
- 市区町村から本人宛に納付書を発行してもらい休業者本人が直接納付する (普通徴収)
なお、注意点として・・・
「1月1日~5月31日」の間に休業を開始し、「特別徴収」を中止する場合は原則「一括納付」しか選択できません。
ただし、
「最終回給与」の金額より「地方税残額」が大きく、全ての金額を控除しきれない場合に限り「普通徴収」を選択してもよい
こととなっています。
以上により、本年度分の地方税残額について、支払方法が確定します。
なお、6月以降も引続き休業する場合で「新年度地方税(6月分~)」について改めて「特別徴収通知」が届いた場合は、「普通徴収」を選択して異動届出書を再度提出します。
よって、6月分以降の地方税は、休業する方本人が直接納付することとなります。
【休業する従業員の方へ伝えておくべきこと】
「特別徴収」から「普通徴収」に切り替えを行った場合、休業する従業員の方本人に送られてくる「納税通知書」については、納付手続き後も処分せず大切に保管しておくよう伝えておくべきです。(電子納付の場合は、納付済エビデンスとなる画面をプリントアウトし保管)
職場復帰後、「普通徴収」から「特別徴収」へ再切り替えを行う際、納付済であることのエビデンスとして、切り替え届出書への添付を求められることがあります。
また、未納付分の「普通徴収 納付書」についても重複納付を防ぐため、切り替え届出書への添付が必要となる場合がありますので、破棄せず保管しておくよう伝えておきましょう。
【休業期間中も給与からの引き落しが可能な場合】
産休・育休期間中も通常通り「給与支給」を行う場合等で、「給与支給月額」が地方税の「特別徴収月額」を上回る場合は、引き続き「特別徴収」を行うことができるため特に手続きを行う必要はありません。
2)切迫早産・切迫流産等で産休前に休業する場合の対応
【休業する場合は傷病手当金を受給できる】
「切迫早産」「切迫流産」「重度のつわり(妊娠悪阻)」等により、「産休前」に療養が必要となり「連続3日以上」休業した場合は、「休業4日目」から「傷病手当金」を受給することができます。
ただし・・・
症状が軽微で、医師が休業を要すると認めない場合を除きます。
「傷病手当金」の支給額は、「出産手当金」と同じく・・・
療養による「休業前12カ月間」の「標準報酬月額平均額」×2/3 ÷ 30日(*)
を日額として支給されます。
健康保険加入後、12カ月に満たない場合は・・・
- 12カ月に満たない部分の、各月の「標準報酬月額」平均額
- 全国健康保険協会が別途発表する、全加入者の「標準報酬月額」平均額(30万円)
のうち、いずれか小さい額÷30日分×2/3を支給日額とします。
なお、「健康保険組合」加入企業の場合は、各健保組合の規定に従い、支給額が決定され、上記に加えて増額支給が行われることもあります。
【傷病手当金の支給申請方法】
「傷病手当金支給申請書」を勤務先の会社を管轄する全国健康保険協会支部(健康保険組合加入の場合は当該健保組合)へ提出します。
まずは、休業する従業員の方ご本人(もしくはご家族等の代理人の方)が・・・
- 傷病名
- 初診日
- 発病時の状況
- 仕事の内容等
を記入します。
次に、治療を受けた「医療機関担当医師の意見書」を受入します。(申請書に意見書受入欄が設けられています)
「医師の意見書」を受入したら、勤務先の会社に提出します。
会社は「休業期間中の給与支払い状況」証明欄を記入し、健康保険への申請を行います。
「傷病手当金支給申請書」を勤務先の会社を管轄する全国健康保険協会支部(健康保険組合加入の場合は当該健保組合)へ提出します。
◆「傷病手当金」の「手続き書類」「申請方法」については、全国健康保険協会ページへのリンクを貼らせていただきます。
病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
注)健康保険組合(組合健保)にご加入の場合は、各「組合健保」の手続きルールに従って下さい。
【傷病手当金が入金されるまでには日数を要する】
「傷病手当金の申請」も「出産手当金」の場合と同じく・・・
直近の「賃金締め切り期間」が経過してからでないと、勤務先による「賃金支払い状況の証明」ができない
仕組みになっています。
そのため、上記の「賃金締め切り日」が経過するまで、手続を完了させることができません。
(休業が長期に渡る場合、複数の賃金締切り期間に分けて申請していくことは可能です)
また、申請手続き完了後、銀行口座入金までは、さらに1カ月以上余裕を見ておいたほうが無難です。
【傷病手当金の支給調整】
「傷病手当金」も「出産手当金」の場合と同じく、支給対象となる「賃金締め切り期間中」に「給与」が支払われた場合には・・・
支払われた「給与額」が「傷病手当金の支給額」を下回っている場合のみ、その差額が支給されます。
「傷病手当金」を上回る「給与」が支給された場合、手当金は支給されません。
なお・・・
「傷病手当金」の支給対象期間中に「賞与」が支払われたとしても、手当金が減額されることはありません
【療養による休業期間中に産休入りした場合】
「療養による休業期間中」に産休入りした場合は、「産休開始日の前日」が「療養期間の終了日」となります。
「傷病手当金の最長支給期間」は「支給開始日から1年6か月」と定められていますが、「傷病手当金の受給期間中」に産休開始となった場合「出産手当金」が優先的に支給されることとなり「傷病手当金の支給」は停止となります。
3)帝王切開等により医療費が高額となりそうな場合の対応
【帝王切開が行われる場合にかかる費用】
「帝王切開」等、「通常の出産」に加え、別途手術等の医療行為が必要となる場合は、通常の出産費用にプラスして医療費がかかります。
仮に帝王切開の手術が必要となる場合・・・
出産費用にプラスして「医療保険適用後の自己負担額」で20万円~50万円程度が必要となります。
ただし、健康保険の「高額療養費制度」を利用すれば、「医療費の自己負担額」を一定額以内に抑えることが可能です。
「自己負担限度額」は「年齢」や「各個人毎の標準報酬月額」によって異なります。
ちなみに「70歳未満」の方の・・・
「健康保険標準報酬月額」と 「毎月の自己負担限度額」の関係は以下のとおりとなっています(*)。
- 83万円以上の方 → 約25万円
- 53万~70万円の方 → 約17万円
- 28万~50万円の方 → 約 8万円
- 26万円以下の方 → 約 6万円
(*)4か月以上支払いが続く場合は、更に減額される特例があります
なお、通常の「出産費用」部分は病気やケガではないので、医療保険の適用外となりますが・・・
50万円(*)までは「(家族)出産育児一時金」でカバーされます。
(*)産科医療補償制度対象外出産の場合は48.8万円
【高額療養費制度と限度額適用認定について】
限度額適用認定制度は医療費が高額になりそうな場合、1カ月間の窓口支払額(1日から月末まで)を高額療養費の自己負担限度額までに抑えられる制度です。
今までこの制度は、事前に限度額適用認定を受け、支払いの際、当該認定証を健康保険証と併せて医療機関窓口へ提示することにより利用できる仕組みとして運用されてきました。
限度額適用認定手続きは原則不要の方向へ
現在「オンライン資格確認」を導入している医療機関等では、マイナンバーカードを提出することにより限度額適用認定の手続きをせずとも制度を利用することができるようになっています。
令和6年12月2日より、健康保険証の発行が廃止となり、マイナンバーカードへの保険証機能移行が実施されておりますので、医療機関窓口での手続きも「オンライン資格確認」に原則一本化されていくこととなり、限度額適用認定手続きも原則不要となる方向にあります。
ただし、現時点では、限度額適用認定の手続き要否について、念のため受診先の医療機関等窓口へ事前確認を行っておくほうがよいでしょう。
◆「限度額適用認定」についてより詳しく知りたい方向けに、全国健康保険協会ページへのリンクを貼らせていただきます。
医療費が高額になりそうなとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
注)健康保険組合(組合健保)にご加入の場合は、各「組合健保」の手続きルールに従って下さい。
【高額療養費制度の概要】
「高額療養費制度」利用の際、月額医療費は・・・
「被保険者」「被扶養者」それぞれの自己負担額を「世帯単位」で合算することができます。
ただし・・・
- 「70歳未満」の場合
- 「世帯単位」で合算することのできる医療費は
- 「同一医療機関内」で「月額21,000円以上」の医療費のみ
と決められています。
また・・・
同一医療機関内の医療費でも「医科」と「歯科」、「外来」と「入院」は合算することができない
決まりとなっています。
なお、制度上「2カ月にまたがって」複数回の手術等、高額医療が行われた場合よりも、「同一月内にまとめて」高額医療が行われた場合の方が、限度額の兼ね合いから自己負担額が少なくなる場合があります。
手術等の高額医療を受ける日を希望できる余裕があるならば、上記も考慮したうえで日程の希望を出すとよいでしょう。
◆高額療養費制度のより詳細な内容については、全国健康保険協会ページへのリンクを貼らせていただきます。
高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
注)健康保険組合(組合健保)にご加入の場合は、各「組合健保」が定める制度内容に従って下さい。
4)育休中の給付金(育児休業給付金)制度について事前確認
従業員の方がいったん「産休」入りしてしまうと、なかなか説明の機会がとれません。
また、休業する方にとっては「産休」も「育休」も出産に伴う休業であることに変わりはありません。
よって、まだ先の話ではありますが「育休」期間中の給付金(育児休業給付金)制度の説明についても「産休開始前」に済ませておくべきでしょう。
【育児休業給付金とは】
育休期間中については「育児休業給付金」が雇用保険から支給されます。
育休は2回に分割して取得することができますが、それぞれの期間について「育児休業給付金」の支給申請を行うことができます。
ただし、退職予定の方や、その他支給要件を満たしていない方には支給されませんので注意が必要です。
【支給要件】
雇用保険に加入しており・・・
「育休開始日」の前日から「1カ月毎」に「24回(2年間)」さかのぼった各月=完全月(*1)の中に・・・
「賃金支払いの基礎となった日数」が「11日以上」または「80時間以上」ある月が「12カ月以上」あること(*2)
が支給要件となります。
(*1)
賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、時間数が80時間以上あったとしても算定期間が1か月に満たない場合(入社直後等)は完全月として数えませんのでご注意下さい。
(*2)
産前産後休業(産休)から引続き育休を取得した場合で、育休開始日の前日からさかのぼり判定した場合に支給要件を満たさない場合は、産休開始日の前日からさかのぼり判定することができます。
また、育休開始日前2年間に、「疾病・負傷等やむを得ない理由」により引き続き30日以上「賃金の支払いを受けることができなかった期間」がある場合は、その期間を2年間に加算し、さかのぼった範囲内(合計4年間が上限)で判定することができます。
【支給対象外となる方】
- 事業主・会社役員など「雇用保険に加入していない」方
- 退職予定者
- 育児介護休業法で認める理由以外で「育児の為の休業」を取得した方
上記に該当する方は、育児休業給付金を受給することができません。
【支給額について】
育休開始から180日間の月額支給額は・・・
育休開始前(*)6か月間の賃金総額 ÷ 180日 × 30日(* )× 67%
<支給上限額315,369円・下限額57,667円(令和6年8月1日~)>
となります。
(*)産前産後休業に引続き育児休業を取得する場合は、産前休業開始前とします。
(*)最終回の支給月については、上記「30日」を「実日数」に置き換えて計算します。(支給上限・下限額は日割り計算となります)
上記の「育休開始前6か月間の賃金総額」とは、休業開始日直前にある「賃金締切り期間」のうち・・・
「賃金支払い基礎日数が11日以上」もしくは「賃金支払い基礎となった時間数が80時間以上」を満たす期間(=完全賃金月)
のみを集計した、直近6カ月分の賃金総額を指します。
次に、育休開始から181日目以降の月額支給額は・・・
育休開始前6カ月間の賃金総額 ÷ 180日 × 30日 × 50%
<支給上限額:235,350円・下限43,035円(令和6年8月1日~)>
となっています。
多胎出産でも増額されない
育児休業給付金については、双子以上の出産であっても給付金額が増額されることはなく、子1人を出産した場合と同額になります。
【支給期間について】
「育児休業給付金」は、最長で、子の1歳誕生日の「前々日」まで支給されます。
「育休」期間は、最長で、子の誕生日「前日」までと定められているのに対し「1日短く」定められています。
- 子が待機児童となり保育園等に入れない場合など「特別な事情」がある場合は、「1歳6か月となる日の前日」まで
- それでも「特別な事情」が解消しない場合は、最長で「2歳誕生日の前日」まで
育休を延長できます。
上記の延長が行われた場合は、給付金の支給期間についても、上記の各年齢となる日の前々日まで延長されます。
ちなみに、上記「特別な事情」には、「育休対象児」を「養育する予定であった配偶者等」が死亡・けが・病気・離婚等、急遽やむを得ない理由によって「育児をすることができなくなった場合」等を含みます。
なお、「子の1歳誕生日前日」より前に育休を終了する場合は、「育休終了日」までの日数分しか育休給付金は支給されません。
【育児休業給付金の支給調整】
(育休給付金が支払われない場合)
「育休開始日」から起算した「1カ月毎」の「各支給単位期間」において・・・
「10日間」かつ「80時間」を超えて就労した場合 または「賃金月額*」の80%以上の給与が支払われた場合
については給付が行われませんのでご注意下さい。
なお、ここでいう給与とは「育休期間中の就労に対して支払われた給与のみ」の合計額を指します。
<「賃金月額」*とは>
「育休開始前」6か月間の賃金総額 ÷ 180日 × 30日(終了月は実日数)
のことを指します。
上記金額に67%(あるいは50%)を乗じた金額が「育休給付金」の支給額となりますので、「掛け目を乗じる前の6か月賃金平均額」に相当します。
なお、「賃金月額」には以下のとおり「上限額」と「下限額」が定められています。
上限額:470,700円 / 下限額:86,070円(令和6年8月1日~)
(育休給付金が減額支給される場合)
「育休開始日」から起算した「1カ月毎」の「各支給単位期間」において・・・
支払った給与額が「賃金月額」の80%未満の場合、「賃金月額の80% ー 給与支給額」に減額のうえ支給されます。
ただし、「育休開始日から180日」までの間は、支払われた給与額が「賃金月額80% と 支給率67%の差分」である「13%」以下に収まっていれば減額の対象とはなりません。
同様の理由で「育休開始日から181日」以降は、支払われた給与額が「賃金月額80% と 支給率50%の差分」である「30%」以下に収まっていれば減額の対象とはなりません。
なお、ここでいう給与額とは、育休期間中の就労に対して支払われた給与のみの合計額を指します。
【育休期間中やむをえず退職することとなった場合について】
「育休期間」中に、やむをえず退職することとなった場合については・・・
「育休開始日」から起算した「1カ月毎の各支給単位期間」において、「退職日の属する期間」の1つ前の「支給単位期間」まで
しか支給は行われません。
◆育児休業給付金について、この記事に記載のない内容については、以下の記事をご参照下さい。
5)育児休業取扱い通知書の作成・通知
【育児休業取扱通知書の作成・通知】
「育児休業取扱い通知書」とは、育休の申出があった場合に、会社が申出者に対し「育休期間中もしくは職場復帰した際」の取扱いについて通知する書類です。
「育休の申出日」から、おおむね2週間以内には交付するようにします。
【産休に続いて育休を取得する場合】
「育休の会社あて申出期限」は、開始予定日の1カ月前まで
となっています。
しかしながら、「産休に続いて育休」を取得する場合は長期休業となります。
よって、できるだけ早く「休業する従業員の方」には「育休のスケジュール」を決めていただき、「産休開始前」に「育児休業取扱通知書」の通知まで済ませておきたいところです。
(出産予定日前に育休取扱通知書を発行した場合の留意点)
実際の出産日が当初の出産予定日通りでなかった場合は、それに伴い、育休開始日と終了日にもズレが生ずることとなります。
実務上、必然的に起こりうることではありますが、このような場合、育児休業期間変更申出書を休業者本人より受け入れするのが正規の手続き方法となります。
育児休業期間変更申出書を受け入れたした場合は、育休取扱通知書についても育休開始日と終了日の記載を変更したうえで再発行を行うこととなりますので注意しておきましょう。
(通知書に記載する主な内容)
- 育児休業の対象外とする場合はその理由
- 休業する期間
- 職場復帰予定日
- 休業期間中の給与・賞与支払い
- 休業期間中の社会保険料・地方税等の支払い
- 職場復帰後の就労条件・所属部署等
- 休業期間中の福利厚生等
【育児休業取扱通知書の通知義務について】
「育児休業取扱通知書」の内容については、その「通知」が育児介護休業法により・・・
- 義務付けられている項目
- 努力義務になっている項目
に分かれます。
以下の項目については、申出者への「書面による通知」が義務付けられておりますので注意が必要です。
(FAXや電子メールでの通知も可とされています)
(書面による通知が義務付けられている項目)
- 育休の申し入れを受けた旨
- 育児休業開始予定日と終了予定日
- 育児休業の申出を拒否する場合、その理由
まとめ
今回は、第2回として、「産休開始前の手続き(後半)について解説してきました。
この記事が、初めて産休・育休の申出を受けた場合など、どうしてよいか分からず困っている会社経営者・労務担当者の方々にとっての一助となれば幸いです。
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