■このページでは、両立支援等助成金〔出生時両立支援コース(第Ⅰ種)〕の支給要件について詳しく解説しています。
◆この情報は令和6年度〔令和6年4月1日~令和7年3月31日まで〕の助成内容に基づきます。
~なお、現時点では令和7年度も令和6年度と同内容の助成が行われる見通しとなっています。
令和6年3月31日までに「出生時両立支援コース(第1種)」の助成対象となる育児休業を開始した事業主については、令和5年度の助成内容に基づき申請を行うこととなります。
◆育休関連コースの助成金については、原則、以下にあてはまる中小企業事業主のみが申請を行うことができます。
小売業(飲食業を含む) | 資本金又は出資額が 5千万円以下、または常時雇用する労働者数が 50人以下の事業 |
---|---|
サービス業 | 資本金又は出資額が 5千万円以下、または常時雇用する労働者数が 100人以下の事業 |
卸売業 | 資本金又は出資額が 1億円以下、または常時雇用する労働者数が 100人以下の事業 |
その他 | 資本金又は出資額が 3億円以下、または常時雇用する労働者数が 300人以下の事業 |
なお、上記いずれかの基準を満たす中小企業事業主であっても、労働関係法令に違反する等、別途定める不支給要件にあてはまる場合は申請することができませんのでご注意下さい。(詳細については以下の記事をご参照下さい)
両立支援等助成金〔出生時両立支援コース(第1種)〕利用上の注意点
社員の方に、子の出生後8週間以内(*)に開始する、連続5日以上の「育児休業」もしくは「出生時育児休業(産後パパ育休)」を取得させた事業主は、一定の要件を満たした場合、両立支援等助成金〔出生時両立支援コース(第1種)〕の申請をすることができます。
(*)出産予定日後に出生した場合は、出産予定日当日から実際の出生日当日から数えて8週間経過日の翌日までを指します
ただし、この助成金を申請するためには、その対象となる「育児休業」もしくは「出生時育児休業」の開始日より前に、所定の「助成金申請要件」を整えておかなければなりません。
具体的には「育児休業規程」「育児短時間勤務制度」の制定や、「育休取得促進のための雇用環境整備措置」などが必要です。
「出生時両立支援コース(第1種)」 の助成内容
この助成金は「育児休業を取得しやすい雇用環境や業務体制の整備」を行う中小事業主のもとで、男性労働者が、子の出生後8週間以内(*)に所定日数以上の育児休業(又は出生時育児休業)を取得した場合に申請できます。
(*)出産予定日後に出生した場合は、出産予定日当日から実際の出生日当日から数えて8週間経過日の翌日までを指します
過去にこの助成金コースを受給したことがない事業主について・・・
- 1人目の育休取得者については連続5日以上(所定労働日数4日以上)
- 2人目の育休取得者については連続10日以上(所定労働日数8日以上)
- 3人目の育休取得者については連続14日以上(所定労働日数11日以上)
の育児休業(又は出生時育児休業)を取得した場合に・・・
第1種として、1人目に20万円(*)・2~3人目に10万円が支給されます。
(*)1人目の申請時に限り、雇用環境整備措置を4つ以上実施済の場合は支給額が30万円に増額されます。
なお、上記申請の前までには、以下の「雇用環境整備措置」を実施済でなければならず・・・
- 1人目の申請を行うためには2つ以上
- 2人目の申請を行うためには3つ以上
- 3人目の申請を行うためには4つ以上
(*)1人目の申請時までに所定
の措置(*)を実施していなければなりません。
(*)出生時育休の申出期限を休業開始日2週間前を超えて設定する事業主は、上記に加え、さらにもう1つの措置を実施する必要があります。
【雇用環境整備措置の内容】
① 従業員に向けた育休に関する研修の実施
② 育休に関する相談窓口(問い合わせ・申込先)の整備
③ 従業員の育休取得事例収集および社内情報の共有
④ 育休取得を促進することに関する方針の社内周知
⑤ 育休取得円滑化のための「業務配分」又は「人員配置」に必要となる措置の実施
また、令和5年12月31日までに育児休業を開始した場合に限り、当該育休期間中の業務を代替する要員を新たに雇用した場合・・・
20万円が加算(代替要員を3人以上雇用した場合は45万円が加算)
されます。
さらに、厚生労働省サイト「両立支援のひろば」に所定の育休取得実績を公表した場合・・・
2万円の加算(1事業主1回限り*)
を受けることができます。
育休取得実績の公表方法については、以下の記事をご参照下さい。
それでは、具体的な申請要件について見ていきましょう。
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Ⅰ.助成対象労働者の育休開始日前日までに、以下を行う必要があります
育休開始日前日までに行わなければならないこと
②「育児休業」「育児短時間勤務制度」に関する規定を含む就業規則の制定と社内周知
(上記の「就業規則」は「労働協約」もしくは「育児休業規程等(常時10人未満の場合)」 に読み替えることができます〔以下同様〕)
③「次世代育成支援対策推進法」に基づく「一般事業主行動計画」の策定と所轄労働局への届出(間に合わない場合は助成金申請時までに実施)
④ 男性労働者が育休取得しやすい雇用環境の整備措置を複数実施
⑤ 育休取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等の策定
なお、助成対象となる育休を取得する労働者は、「雇用保険被保険者」でなければなりません
助成金支給申請時に必要となる各種確認書類の事前確認
■助成金支給申請の際には、以下の書面提出が求められます。
A)「雇用契約書」「労働条件通知書」「労働者派遣契約書」等のいずれか
「所属・部署・職務」「所定労働時間」「所定労働日または所定労働日数」「就業予定日数」を証明するものとして提出します。
- 「育休取得者」については、休業前と休業期間中の状況がそれぞれ分かるものが必要です。
- 「代替要員」については、新規雇入れ日(又は派遣日)の分かるものが必要です。(育休開始日が令和5年12月31日以前であり「代替要員加算」を申請する場合のみ)
玉突き代替(*)の場合は、育休取得者の業務を「いったん代替した者」の分についても提出が必要です。
(*)玉突き代替:育休取得者の業務をいったん既存メンバーが代替し、既存メンバーの業務を新規雇用者が代替すること
上記の書面のみで証明できない場合には、以下の中から必要なものを選択し提出しなければなりません。
(育休開始日が令和5年12月31日以前であり「代替要員加算」を申請する場合は、「代替要員」の状況についても確認できるものが必要です)
- 会社休日カレンダー(所定労働日・所定労働日数を確認できるもの)
- 勤務シフト表(シフト制勤務の場合必須)
- 配属された部署、職務が分かる組織図(育休開始日が令和5年12月31日以前であり「代替要員加算」を申請する場合のみ)
B)「育児休業申出書」(育休期間が変更されている場合は「育児休業期間変更申出書」)
~「育休取得者」から提出されたことを確認します。
C)「育休取得者」の「出勤簿」または「タイムカード」と「賃金台帳」
~「育休前1か月分」および「育休期間中(5日以上〔所定労働日を4日以上含む〕)」の休業状況を確認できるものが必要です。
~「育休取得日」について賃金控除が行われている月の「賃金台帳」には、計算根拠が分かる任意書式の添付が必要です。
D)「代替要員」の「出勤簿」または「タイムカード」と「賃金台帳」(育休開始日が令和5年12月31日以前であり「代替要員加算」を申請する場合のみ)
~「新規雇入れ日」から「育休終了日」までの就業実績を確認できるものが必要です。
→ なお、在宅勤務日については、業務日報等により「勤務日」「始業・就業時刻」が確認できる日のみ就業した日と判断します。
→ 玉突き代替の場合、 育休取得者の業務を「いったん代替した者」の分については提出不要です。
E)「母子手帳」(子の出生を証明する部分)
~助成対象となる労働者に「子がいること」と「子の出生日」を証明するために提出します。
出生した子を助成対象となる労働者の被扶養者とした場合は「子の健康保険証」でも可能です。
「育児休業」「育児短時間勤務」の規定を含む就業規則制定と社内周知
(上記の「就業規則」は「労働協約」もしくは「育児休業規程等(常時10人未満の場合)」に読み替えることができます〔以下同様〕)
■助成対象となるためには、最低限、以下の事項を「就業規則」に定めておく必要があります
A)「育児休業制度」について
B)「育児のための所定労働時間短縮措置」について
C)「育児休業」に係る手続や賃金の取扱等について
~「規則の内容は育児・介護休業法に定める通りとする」といったような「委任規定」を就業規則に定めているだけの場合は、助成対象となりません
~常時雇用する従業員数が10人未満で就業規則の作成・届出が義務付けられていない会社の場合は、上記A)~C)が明文化された「育児休業等に関する規程等」就業規則に準ずるものが労働者に周知されていることが必要です
~A)およびB)については助成金支給申請の際、規定した年月日を報告する必要があります
◆なお、育休取得者が勤務する事業場と本社において、別々に就業規則等を定めている場合は、その両方の写しが必要となります。
■「育児・介護休業法」の水準を上回る運用をする場合は、必ず「就業規則」に規定しなければなりません
~育休期間を有給扱いにする等、法律を上回る制度を運用している場合であっても、「就業規則」に規定がなければ、助成対象として評価されません
■出生時育児休業の申出期限を休業開始日2週間前を超えて設定している事業主は、労使協定添付が必要です
「出生時育児休業(産後パパ育休)」制度の申出期限を、法定期限である2週間より前に設定している事業主については、当該根拠となる労使協定の添付が必要となります。
(法定内容を一定程度上回る「出生時育児休業制度」を個別に労使協定で定める会社のみに対し、当該申出期限を2週間前までではなく、1カ月前までの期間で定めることができる特例が適用されることとなるため)
■ 助成金申請時までには、最新の「育児・介護休業法」を反映した規則に改定しておかなければなりません
「次世代育成支援対策推進法」に基づく「一般事業主行動計画」の策定と所轄労働局への届出
(「プラチナくるみん認定」を受けている事業主は、策定・届出ともに不要です)
■休業開始日までに間に合わない場合は、助成金の支給申請日までに、策定・届出・公表及び周知まで終了していなければなりません
男性労働者が育休取得しやすい雇用環境の整備措置を複数実施
■ 以下の雇用環境整備措置の中から複数の措置を実施していなければなりません
具体的には、以下の措置の中から・・・
- 1人目の申請を行うためには2つ以上
- 2人目の申請を行うためには3つ以上
- 3人目の申請を行うためには4つ以上
の措置を実施していなければなりません。
① 従業員に向けた育休に関する研修の実施
② 育休に関する相談体制の整備
③ 従業員の育休取得事例収集および社内情報の共有
④ 育休取得を促進することに関する方針の社内周知
⑤ 育休取得円滑化のための「業務配分」又は「人員配置」に必要となる措置の実施
なお、出生時育休の申出期限を休業開始日2週間前を超えて設定する事業主(*)は、上記に加え、さらにもう1つの措置を実施する必要があります。
(*)
法定内容を一定程度上回る「出生時育休制度」を個別に労使協定で定める会社に対しては、当該申出期限を2週間前までではなく、1カ月前までの期間で定めることができる特例が適用されます。
■雇用環境の整備措置は、育休取得者の雇用契約期間中、かつ、育休開始日前日までに実施されていなければなりません
■雇用環境の整備措置を「実施した事実」と「実施日」を確認できる証拠書類を提出しなければなりません
【措置内容に応じた証拠書類の例】
① 従業員に向けた育休に関する研修の実施
→研修の開催案内、研修の実施要領等
② 育休に関する相談体制の整備
→相談窓口の設置に関する案内、周知資料等
③ 従業員の育休取得事例収集および社内情報の共有
→事例を掲載した書類等
④ 育休取得を促進することに関する方針の社内周知
→周知資料(メール送信・回覧の場合は全労働者に送信・回覧したことが確認できるもの)等
⑤ 育休取得円滑化のための「業務配分」又は「人員配置」に必要となる措置の実施
→育休取得者の業務を代替する労働者等の業務リスト(業務の見直し・休止状況が分かるもの)、業務マニュアル(代替業務を効率化するために作成したもの)等
育休取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等の策定
■育休期間中の業務を代替する労働者の負担を軽減するため、労使合意に基づき「業務代替者の業務見直し」に係る規定等を策定し、当該規定等に基づき業務体制を整備できるようにしておかなければなりません。
~上記の規定等は、少なくとも育休開始日までには策定しておく必要があります。
■なお、上記の規定等については・・・
- 育休復帰支援プラン(本助成金ではプラン自体の提出義務は無し)
- 就業規則(育児休業規程等に定めてもよい)
- 労使協定
のいずれかに、規定等しておく必要があります。
■規定等しておくべき内容は・・・
- 育休取得者の業務の整理・引継ぎに関する事項
- 引継ぎ対象業務の見直しの検討に関する事項
の2点となります。
なお、業務の見直しの検討に関する事項については、具体的な見直し手順等まで定める必要はありません。
業務効率化・省力化・実施体制変更・外注の利用等、引継ぎ業務の負担回避を行う取り組み方について規定しておけばよいとされています。
Ⅱ. 男性労働者が「出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育休」を取得する必要があります
出生後8週間以内について
- 出生後8週間以内とは、子の出生日当日を含む57日間をいいます。
- 出産予定日前に子が生まれた場合は、「実際の出生日」から「出産予定日の8週間後」までを「出生後8週間以内」として取り扱います。
- 出産予定日後に子が生まれた場合は、「出産予定日」から「実際の出生日の8週間後」までを「出生後8週間以内」として取り扱います。
~上記の期間内に男性労働者が、育休取得を開始していなければなりません。
育休期間中の就業について
育休期間中に労働者が就業した日については育休取得日数としてカウントされません。
Ⅲ.確保した代替要員は、以下の全てを満たしている必要があります
(この項目は「代替要員加算」を申請する場合のみ参照して下さい)
なお、代替要員加算の対象となる育児休業は、令和5年12月31日までに開始した休業に限りますのでご注意下さい。(令和6年1月1日より「育休中等業務代替支援コース」が新設されたことによる措置)
確保した代替要員が満たしていなければならないこと
育休取得者の業務を代替している
- 育休取得者が兼務していた複数業務中の一部のみの代替であっても代替要員として認められます。
- 育休取得者が、有資格者しか従事できない業務に携わっていた場合は、当該資格を保有する代替要員を確保しなければなりません。
- 育休取得者に対し支払っていた業務手当については、代替要員にも支払われていなければなりません。
(雇用形態の違いを理由に当該手当を支払わないことは認められません)
育休取得者と同じ事業所、部署に勤務している
- 育休取得者の業務が別の事業所に移管された場合や、育休取得者がテレワーク等により勤務場所を限定しない働き方をしていた場合は、勤務場所が異なっていても構いません。
ただし、育休取得者と同種の業務が他の事業所にあるということだけで、実際に業務を代替したものでない場合は認められません。
所定労働時間が育休取得者の1/2以上である
■代替要員の所定労働時間については、以下のいずれかを満たしていなければなりません。
・1週あたり所定労働日数が育休取得者と同一である場合、1日あたりの所定労働時間が1/2以上あること
(複数の代替要員を確保する場合は、その全ての代替要員について1週あたり所定労働日数が育休取得者と同一である場合に限ります)
・1週あたり所定労働時間の合計が1/2以上あること
( 複数の代替要員を確保する場合は、全ての代替要員の所定労働時間合計が育休取得者の1/2以上あれば足ります)
【代替要員を3名以上確保した場合】
代替要員を3名以上確保した場合は、それぞれの代替要員について、個別に上記の要件を満たしている必要があります。
「新たな雇い入れ」又は「新たな派遣」により確保されたものである
■代替要員は、「新たな雇い入れ」又は「新たな派遣」により確保された労働者でなければなりません。
育休取得者から「本人又は配偶者の妊娠事実」の報告を受けた日以後に確保した代替要員である
■ 代替要員の確保は「妊娠事実」を知った日以降に行ったものでなければなりません。
業務代替期間が育児休業期間の8割以上ある
- 単発的な短期の欠勤日(各月の所定労働時間の10%未満)
- 法に基づく休業日(*)
- 雇用調整助成金の支給対象ではあるが、代替要員について助成金を受給しなかった休業日
は就業したものとみなされます。
なお、在宅勤務日については、業務日報等により「勤務日」「始業・就業時刻」が確認できる日のみ業務を代替した日と判断します。
【法に基づく休業日(*)とは?】
年次有給休暇、産休、育休、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、母性健康管理措置等による休業日を指します
【代替要員を複数名確保した場合】
代替要員を複数名確保した場合は、全ての代替要員が個別に勤務した日(又は時間)について、「育児休業期間の8割以上」あれば要件を満たします。
同僚の労働者が「育休取得者の業務」を代替する一方で、新たに「同僚の労働者の業務」を代替する者を確保した場合(いわゆる「玉突き」)も支給対象となります。
その場合は、「育休取得者」を「同僚の労働者」に読み替えて要件を判定します。
以上を確認できた後、「出生時両立支援コース(第1種)」の助成金支給申請手続きを行うことができます。
育休開始日が令和5年12月31日以前の場合のみ、育休期間中に業務代替要員を新規雇用(労働者派遣を含む)した場合、「代替要員加算」措置を受けることができます。
「出生時両立支援コース(第1種)」の申請書面上で、同時に「加算」の申請を行うことができます。
さらに、「情報公表加算」の申請を行う場合は、別途「情報公表加算支給申請書」の提出が必要となります。
(申請期限は、育休終了日の翌日から起算して2か月以内となります)
申請先は、本社等(※)の所在地にある労働局 雇用環境・均等部(室)となります。
(※)人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所を指します
当事務所では、小規模企業の産休・育休をバックアップすべく・・・
育休関連助成金の申請サポート【事前手数料なし / 完全成果報酬制】を行っております。
(東京しごと財団 働くパパママ育業応援奨励金 の併給申請サポートも可能です)
◆育休推進企業に向けては、育休関連経費を大幅に上回る助成金制度が準備されています。
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CLASSY. 2024年2月号(12/27発行) 「“私”のアドバイザー」欄に掲載されました
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