【介護休業中に就業した場合】介護休業給付金の不支給・減額ルールについて分かりやすく解説!

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雇用保険の介護休業給付金制度には、介護休業期間中に就業させた場合、又は当該休業期間に対して、あらかじめ定められた金額以上の賃金を支払った場合に給付金を「不支給」あるいは「減額支給」とする、いわゆる支給調整ルールが定められています。

この記事では、この介護休業給付金支給調整ルールについて分かりやすく解説していきます。

介護休業給付金の支給調整(不支給となる場合)

介護休業給付金の支給対象となる休業期間中に、一定以上就労した場合、もしくは給与が支払われた場合には・・・

給付金が不支給となる

場合があります。

具体的には・・・

休業開始日から1カ月ごと(1か月未満となる場合はその期間)に区切った各支給単位期間において・・・

10日間かつ80時間えて就労した

 または

休業開始時賃金月額80%以上「給与」支払われた

場合に、その全額が不支給となります。

なお、

終了日を含む「支給単位期間」は、1か月未満となるケースがほとんどですが・・・

この期間中に就業した場合も例外適用はなく、その日数が10日以下であれば支給要件を満たす

こととされています。

ただし、別途、終了日を含む「支給単位期間」中には、少なくとも1日は、「終日に渡り介護休業を取得した日(*)」が含まれていなければならないルールがありますので注意が必要です。

(*)ここでいう「終日に渡り介護休業を取得した日」には、土日祝日等の会社休業日を含めることができます。

また、不支給となる給与支払額の基準は・・・

「介護休業給付金支給額」の80%以上ではなく「休業開始時賃金月額」の80%以上

となっておりますので、こちらも間違えないようにして下さい。

休業開始時賃金月額とは

休業開始時賃金月額は・・・

介護休業開始前6か月間の賃金総額÷180日×30日

によって計算されます。

上記の金額に67%を乗じた金額が、介護休業給付金の支給額となりますので・・・

休業開始時賃金月額とは「掛け目を乗じる前の6か月賃金平均額」

に相当します。

なお、介護休業を分割(最大3回まで分割可)して取得した場合は、それぞれの休業期間ごとに給付金の申請を行うため、その都度「休業開始時賃金月額証明書」を提出し、算定が行われることとなります。

不支給となる場合の支給調整例

以下は、介護休業給付金が不支給となる場合の支給調整例となります。

なお、実際に支給調整が行われる際には「休業開始時賃金月額」の上限額・下限額が考慮される点に注意が必要です。

■「休業開始時賃金月額」上限額:518,100円 / 下限額:86,070円(令和6年8月1日~)

【例1】

休業開始時賃金月額が30万円で、支給単位期間中に給与25万円が支払われた場合・・・

休業開始時賃金月額30万円×80%である24万円を上回る給与が支払われておりますので、給付金の全額が不支給となります。

【例2】

休業開始時賃金月額が60万円で、支給単位期間中に給与45万円が支払われた場合・・・

休業開始時賃金月額上限額518,100円の80%である、414,480円を上回る給与が支払われておりますので、給付金の全額が不支給となります。

分割して介護休業を取得する場合の留意点

介護休業を分割して取得する場合、給付金の申請(および休業開始時賃金月額証明書の提出)は、休業後に都度行わなければならないため、以下の点に留意が必要です。

【前回休業期間中に10日間かつ80時間を超えて就労し、給付金が不支給となっていた場合】

賃金締切り期間6か月分が経過する前に、次回休業を開始した場合、給付金申請時には、不支給となった際に支払われた賃金額も含めて「休業開始時賃金月額」が算定されることとなります。

【前回休業終了後に介護短時間勤務制度等を利用して職場復帰し、時短した分の賃金額が減額となっていた場合】

次回休業時に支給される給付金は、減額後の賃金額をベースに「休業開始時賃金月額」が算定されるため、給付金の金額が小さくなります。

これらは、休業取得者の方へ事前に説明しておきたいところです。

介護休業給付金の支給調整(減額支給の場合)

介護休業開始日~その翌月応当日前日までを初回期間とし、1カ月毎に区切った各「支給単位期間」において、「休業開始時賃金月額」の80%未満の「給与」が支払われた場合については・・・

「休業開始時賃金月額」の80%相当額から「支払われた給与額」を差し引いた金額が給付金の額となります。

介護休業給付金の支給額から支払われた給与額を差し引くわけではありませんので、間違えないよう注意が必要です。

減額支給の対象外となる場合

ただし・・・

支払われた給与額が「休業開始時賃金月額」の13%以下であれば、給付金は減額されません。

減額支給となる場合の支給調整例

以下は、介護休業給付金が減額支給となる場合の支給調整例となります。

なお、実際に支給調整が行われる際には「休業開始時賃金月額」の上限額・下限額が考慮される点に注意が必要です。

■「休業開始時賃金月額」上限額:518,100円 / 下限額:86,070円(令和6年8月1日~)

例1

休業開始時賃金月額が30万円で、支給単位期間中に給与12万円が支払われた場合・・・

休業開始時賃金月額30万円×40%である12万円が給与として支払われておりますので、休業開始時賃金月額30万円×80%である24万円と12万円との差額である、12万円が支給されます。

例2

休業開始時賃金月額が30万円で、支給単位期間中に給与3万円が支払われた場合・・・

休業開始時賃金月額30万円×10%である3万円が給与として支払われておりますが、休業開始時賃金月額30万円×13%以下であるため、給付金は減額されず、その全額が支給されます。

【例3】

休業開始時賃金月額が60万円で、支給単位期間中に給与30万円が支払われた場合・・・

休業開始時賃金月額上限額518,100円の80%である、414,480円と30万円との差額114,480円が支給されます。

支給調整の対象となる給与の定義

休業開始時賃金月額×80%以上の「給与」が支払われた場合、介護休業給付金は不支給となり、80%未満の「給与」が支払われた場合は、減額支給となりますが・・・

ここでいう「給与」とは・・・

支給単位期間(*1)中に支払日が到来したもの

 の内、

支給単位期間中の日に対して支払われた給与・手当等の賃金総額(*2)のみ

(*1)休業開始日から1カ月ごと(1か月未満となる場合はその期間)に区切った支給判定期間
(*2)時間外手当・精皆勤手当・通勤手当等も含めた全ての賃金総額

のことを指します。

介護休業した日以外の賃金を含む場合

介護休業した日以外を計算対象とした賃金を含む「給与」については、原則、支給調整の対象にしないとされています。

ただし、上記「給与」の中から、介護休業した日に対して支払われた金額のみを明確に区別できる場合は、支給調整の対象となります。
(実際の支給調整は申請先当局が決定します)

例えば、1か月を超える期間の介護休業を取得した場合で、

・休業開始日が4月15日
・賃金締切日が月末日
・賃金支払日が翌月10日

であれば・・・

最初の「支給単位期間」は4月15日~5月14日となり、「給与支払日」は5月10日に到来します。

5月10日に支給される「給与」は、4月1日~4月30日を計算対象としており、「介護休業期間」外である、4月1日~4月14日を計算対象とした賃金を含んでいます。

このため、5月10日に支給される「給与」は、4月15日~4月30日の「介護休業期間」を計算対象とした賃金も含め、原則的にはその全額が支給調整の対象外となります。

ただし、4月15日~4月30日の「介護休業期間」に対してのみ支払われた給与額を日割り計算等で明確に区別して算定できる場合は、当該金額が支給調整の対象となります。(実際の支給調整は申請先当局が決定します)

賞与を払っても介護休業給付金は減額されない

介護休業期間中に給与を支払うと、介護休業給付金が不支給もしくは減額される等、支給調整の対象となりますが、介護休業期間中に賞与を支払っても支給調整が行われることはありません。

高年齢雇用継続給付との支給調整に注意

以下に該当する労働者は、その他一定の条件を満たすことにより、高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金および高年齢再就職給付金)の支給対象となります。

・60歳以上65歳未満の雇用保険加入者(雇用保険被保険者)の各月の賃金額が、60歳時点の賃金額の75%未満に低下した場合

・60歳以後に再就職し、雇用保険に加入した被保険者の各月の賃金額が、前職での賃金額の75%未満に低下した場合

上記、高年齢雇用継続給付の支給対象月について、その初日から末日までの間、引き続いて介護休業給付金を受給できる場合は、介護休業給付金の支給が優先され、その月の高年齢雇用継続給付は支給されませんので、対象となる労働者の方がいれば、事前にお伝えしておきたいところです。