【介護離職を防止!】介護休業制度の内容について分かりやすく解説!

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介護休業制度は、労働者が家族の介護が必要となった場合に、直接介護を行う、あるいは、以降の介護期間長期化に備え、介護認定取得や介護サービス選定・申込等の事前準備を行うために一定期間仕事を休むことができる制度です。

団塊世代が75歳以降の後期高齢者となる中、この制度を広く周知し、その利用を促進することで、介護離職を未然に防ぎ、仕事と介護の両立支援を可能とすることが、今後ますます求められていくことでしょう。

この記事では、介護休業制度の概要・対象者・休業期間・取得方法等について分かりやすく解説していきます。

介護休業制度とは?

介護休業制度とは、育児介護休業法に基づき「要介護状態」にある家族の介護を理由として、労働者が一定期間、会社に申し出て休業できる制度です。

なお、育児介護休業法では、介護のための休業制度として「介護休業」と「介護休暇」の制度を別々に定めています。

まずは、こちらの2つを混同しないように注意しておきましょう。

介護休業と介護休暇では制度の主旨が異なる

「介護休業」も「介護休暇」も「要介護状態」にある家族の介護のために取得できる制度ですが、その趣旨には大きな違いがあります。

【介護休業


ある程度まとまった期間(3回に分け通算93日まで)休業することを前提とした制度となっている


市区町村窓口や地域包括支援センター等への相談、介護保険適用のための介護認定手続き、利用施設やサービスの申込といった、長期介護に備えた準備を行うための休業期間として活用することが期待されており、介護離職を未然に防ぎ、仕事と介護の両立支援を図ることが目的とされている


直接家族の介護を行うために取得することも可能となっている

【介護休暇


短期間の休暇を取得することを前提とした制度となっている


突発的な事象が発生した際、仕事と介護の両立をしやすくすることを目的としている


家族の介護に関わる理由であれば、対象家族1人につき5日、2人以上の場合は合計10日まで取得できることとなっている
(2人以上の場合は、1人のみに対して10日取得することも可能)

なお、この記事では、上段の「介護休業」制度について解説していきます。

要介護状態とは

「介護休業」も「介護休暇」も「要介護状態」にある家族の介護のために取得できる制度ですが、ここでいう「要介護状態」とは・・・

・負傷
・疾病
・身体上の障害
・精神上の障害

により

2週間以上の期間に渡り「常時介護を必要とする状態」

を指します。

必ずしも、介護保険制度上の要介護認定を受けている必要はありません。

なお、育児介護休業法には「常時介護を必要とする状態」にあることを確認するための明確なルールは定められておらず、厚生労働省より、あくまでも参考として、「常時介護を必要とする状態」についての判断基準のみが示されています。

その内容は・・・

・介護保険制度の要介護状態区分が「要介護2」以上
・厚生労働省の「常時介護を必要とする状態に関する判断基準(以下のページリンクご参照)」に該当

のいずれかによって判定する内容となっています。

つまり、事業主には、労働者が仕事と介護を両立できるよう「厳格なルールにとらわれず」「柔軟に」介護休業あるいは介護休暇の制度を利用できるよう取り計らうことが求められているということになります。

介護休業を取得できる労働者

以下の条件を満たす労働者が、介護休業を取得することができます。


日雇い労働者でない労働者


介護休業の「取得予定日から数えて93日目」より起算し「6か月以内」に「労働契約が終了」し、かつ「契約更新されないことが明らか」でない労働者


労使協定により除外対象となっていない労働者

労使協定により除外対象とすることができる労働者

労使協定により介護休業の取得対象から除外できる労働者は以下の通りです。

・入社後1年未満の労働者
・介護休業の「申出日」から数えて93日以内に雇用期間が終了する労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

介護休業の対象となる家族の範囲

介護休業の対象となる家族の範囲は、次のように定められています。

①配偶者(事実婚を含む)
②父母(養父母も含む)
③子(養子も含む)
④配偶者の父母(養父母も含む)
⑤祖父母・兄弟姉妹・孫

なお、対象となる家族の範囲が、上記の①~⑤に含まれていれば、扶養し、もしくは同居している場合でなくとも介護休業を取得することができます。

ちなみに、上記③の子については、法律上の親子関係がある子に限ります。
(戸籍上、認知届を提出していない子や養子縁組していない養子は対象家族に含めることができませんのでご注意下さい)

休業期間と回数

介護休業は、対象家族1人につき・・・

分割して3回まで
通算して93日まで

同一事業主のもとで取得することができます。

同一家族を対象とした介護休業であっても、別事業主のもとで取得した回数や日数を引き継いでカウントすることはありません。
つまり、転職後に介護休業の取得要件を満たせば、新たに分割して3回、通算して93日まで休業することができるということです。

なお、この場合の93日は、暦日単位で土日祝日等、所定労働日以外の日も含めてカウントすることに注意が必要です。
年末年始・ゴールデンウィーク・夏季休暇等の長期連休を含めて休業する場合は、その前後に分割して取得したほうが、日数的には労働者にとって有利に休業を取得することが可能となります。(ただし残りの分割可能回数は減ります)

この点は、休業申出を受けた際、事前説明できるようにしておきたいポイントですので、しっかりと理解しておきましょう。

申出方法

申出期限

介護休業は、原則、休業開始予定日の2週間前までに申出しなければなりません。
(事業主が、労働者にとって有利になるよう、2週間よりも短い申出期限を就業規則等に定める場合は除きます)

なお、事業主は、期限より遅れて申出があった場合はその日数分、休業開始予定日を遅らせて指定することができます。
この場合、事業主は、原則として申出日の翌日から3日以内(*)に、書面で休業開始日を指定しなければなりません。

(*)申出日の翌日から3日以内の日を休業開始日として指定する場合はこの限りではありません。

なお、上記は事業主による「休業開始日」の指定ルールです。
労働者からの申出に対し、事業主が「休業期間」そのものを指定することは禁止されていますので注意しておきましょう。

証明書類の提出

事業主は、必要に応じて、介護の対象となる家族について・・・

①申出した労働者との続柄を証明する書類
②要介護状態等にあることを証明する書類

の提出を求めることができます。

ただし、上記②の証明書類を「医師の診断書」や「医師の意見書」等に限定し、これらが提出されなかったことのみを理由に、介護休業の取得申出を拒否してはなりません。

事業主には、エビデンスの種類を限定せず、より柔軟に実状を確認すべきことが求められています。

申出期間の変更(法律で認めているのは終了日の繰下げ変更のみ)

育児介護休業法では、いったん申出のあった介護休業期間について、終了予定日を繰り下げる(延長する)変更のみを認めています。

また、この変更申出は・・・

・休業する労働者からの申出であること
・休業終了予定日の2週間前までの申出であること
・1回の休業期間について1回に限る申出であること

全てを満たしていなければなりません。

なお、

・終了予定日の繰上げ(前倒し)
・開始予定日の繰上げ(前倒し)
・開始予定日の繰下げ(後倒し)

は、育児介護休業法により法定されてはいませんが、事業主が独自に認めることは可能です。

この場合は、労働者により許可したり、許可しなかったりと、朝令暮改にならないよう、就業規則(育児介護休業規程)等に規定しておくのが望ましいとされています。

申出の撤回

育児介護休業法において、介護休業の申出撤回は、休業開始予定日の前日までであれば、理由を問わずに認められるとされています。

ただし、同一の対象家族について、2回連続して撤回の申出をした場合は、以後、その家族を対象とした介護休業の申出について、事業主は拒否することができるとされています。

2回連続して撤回した後の3回目申出を事業主が独自に認めることは可能ですが、この場合も朝令暮改にならないよう、就業規則(育児介護休業規程)等に規定しておくべきでしょう。

休業期間の途中終了

介護休業期間中に以下の事情が生じた場合は、休業中の労働者の意思に関わらず、介護休業は途中終了することとなります。

介護対象家族が死亡した場合
②離縁等により介護対象家族と労働者との親族関係が消滅した場合
③労働者本人の負傷、疾病等により介護ができなくなった場合
④産前産後休業、育児休業もしくは新たな介護休業が開始となった場合

なお、上記①~③の事由が生じた場合、労働者は速やかに事業主へ通知しなければならないこととされています。

また、①~③の事由が介護休業開始日前に生じた場合も、労働者は速やかに事業主へ通知しなければなりません。
(この場合、介護休業の申出自体は無かったものとみなされます)

介護休業の取扱い通知

介護休業の申出を受けた事業主は、速やか(申出日からおおむね2週間以内)に・・・

①介護休業の申出を受けた旨
②介護休業の開始予定日と終了予定日
③介護休業の申出を拒否する場合はその理由

について、書面・FAX・電子メール等(口頭以外の方法)により、申出をした労働者に対して通知することが義務付けられています。

なお、上記①~③は通知が義務付けられている最低限の内容とされており、この他にも・・・

・休業期間中の給与、賞与の支払い
・休業期間中の社会保険料、地方税(住民税)等の徴収方法
・休業後の就労条件、所属部署
・休業期間中に家族の介護をしなくなった場合の対応方法

等について通知を行うことが望ましいとされています。

なお、厚生労働省では、以下の書式を用いて通知を行うことを推奨しています。

介護休業期間中の賃金ならびに介護休業給付金

介護休業期間中は、事業主に賃金の支払いが義務付けられておらず、無給とする会社がほとんどです。

このため、雇用保険制度の中には、介護休業期間中の収入を補助する目的で「介護休業給付金」の制度が設けられています。

雇用保険に加入している労働者が、所定の支給要件を満たした上で申請を行った場合は、概ね「休業開始前6か月間の賃金平均額×67%」が支給されます。

なお、介護休業給付金の支給要件等について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照下さい。

介護休業期間中の社会保険料支払い

育児休業の場合とは異なり、介護休業期間中については、本人負担分・会社負担分ともに、社会保険料(健康・介護・厚生年金の各保険料)の支払いが免除となる制度はなく、休業期間に関わらず通常通りの支払が必要となります。

この一方、月次の賃金計算において介護休業取得日を無給扱いとした結果、賃金支給額が0あるいは小さな額として算定されると、給与支給時に社会保険料控除が行えなくなるケースが発生します。

よって、介護休業を開始する前には労働者との間で、社会保険料の清算をどのように行うか?について取決めしておく必要があります。

社会保険料の支払いは、日本年金機構から事業主あてに毎月送付される保険料納入告知書の金額に基づき、支払期限(社会保険料発生月の翌月末日〔土日祝の場合はその翌日〕)までに、各従業員ごとに算定された本人負担分・会社負担分を全て一括して口座振替等により支払うのが一般的です。

事業主は、通例、給与支給日に控除した全従業員の社会保険料(本人負担分)相当額を預り金としてプールしておき、会社負担分に追加して上記の支払いに充てています。

このため、介護休業期間中に社会保険料の賃金控除を行えなかった場合は、本人負担分について後日支給分の賃金からまとめて控除し清算するか、労働者から直接徴収して清算する等の方法が考えられます。

介護休業期間中の地方税(住民税)支払い

地方税(住民税)を賃金控除(特別徴収)している場合も、介護休業取得日を無給扱いとした場合、賃金支給額が0あるいは小さな額として算定されると、給与支給時に控除が行えなくなるケースが発生します。

この場合も、介護休業を開始する前に労働者との間で、賃金控除できなかった場合の金額についてどのように清算を行うか?取決めしておく必要があります。

なお、事業主による地方税(住民税)支払いは、毎年5月頃に労働者の居住する市区町村から送付される特別徴収票に基づき、6月~翌年5月までの間、あらかじめ決められた金額を市区町村ごとに、毎月10日(土日祝の場合はその翌日)までに納税することとなっています。

事業主は、通例、給与支給日に控除した全従業員分の地方税(住民税)相当額を預り金としてプールしておき、上記の支払いに充てています。

このため、介護休業期間中に賃金控除を行えなかった場合は、後日支給分の賃金からまとめて控除し清算するか、労働者から直接徴収して清算する等の方法が考えられます。(後日清算の考え方は社会保険料の場合と同様となります)