【介護休業中の手当】介護休業給付金の支給要件について分かりやすく解説!

この記事をシェア!


雇用保険制度では、仕事と介護の両立を支援し労働者の生活の安定を図ることを目的として、介護休業期間中の収入を補助するために介護休業給付金の制度を設けています。

この記事では、介護休業給付金の支給要件について分かりやすく解説していきます。

介護休業期間中の給与支払いについて

各企業とも、一般的に介護休業期間中の給与は無給扱いとしています。

理由は・・・

給与の支払いを行うと、休業期間中に支給される介護休業給付金が減額される仕組みがある

ためです。

休業する労働者は、雇用保険に加入し一定の条件を満たしている場合、「介護休業給付金」を受給することができます。

一方、支給対象となる休業期間中に給与が支払われると、その金額に応じて給付金は「無支給」又は「減額支給」となる場合があります。

加えて、事業主には・・・

「介護休業期間中の給与支払義務」はありません(*)

(*)就業規則等で別途、給与支給についての定めがある場合は除きます

よって、介護休業期間中の給与支給は無給扱いとする企業が一般的となっているわけです。

それでは、引き続き、具体的な介護休業給付金制度の内容について見ていきましょう。

介護休業給付金とは?

介護休業給付金の制度概要

介護休業給付金は・・・

・雇用保険法に基づき
・介護休業期間中の収入を支えるものとして
休業前給与額(*)の2/3(67%)程度を支給する

(*)別途上限額が設定されていますので、高収入の対象者へ説明する際には注意が必要です

制度内容となっています。

ただし、退職予定の場合や、その他要件を満たしていない場合には支給されません。

支給対象となる休業要件

介護休業給付金は「育児介護休業法に定める介護休業」を取得した場合に、その休業期間終了後に申請することができます。

同一の対象家族について・・・

・最大3回
・通算して93日分

まで申請することができます。

申請対象となる労働者が同一人物であっても、介護休業の対象家族が別々であれば、上記申請回数や日数の上限は別々にカウントします。

なお、育児介護休業法に別途定めがある「介護休暇」については支給対象となりませんので注意が必要です。

介護休業給付金の支給対象者

介護休業給付金は、以下の要件をすべて満たす労働者を支給対象としています。

雇用保険に加入している(雇用保険被保険者である)こと

日雇い労働者でないこと

休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日又は時間数80時間以上ある月が通算して12か月以上あること

退職予定でないこと

それでは、各要件の内容について、より詳しく見ていきましょう。

雇用保険の被保険者であること

日雇い労働者を除き、雇用保険に加入していれば、正社員・契約社員・パートタイマー・派遣社員・期間雇用者など雇用形態は問いません。

なお、65歳以上で雇用保険に加入している「高年齢被保険者」も支給対象となっています。

日雇い労働者でないこと

日雇い労働者は、介護休業の取得対象から除外されていますので介護休業給付金も支給対象外となります。

退職予定でないこと

介護休業給付金は介護休業終了後の職場復帰を前提とした給付金制度となっています。

このため、介護休業取得の時点で退職することを予定している労働者は申請することができませんので注意が必要です。

〔期間雇用者の場合は労働契約終了の予定時期に注意する!]

期間雇用者も介護休業給付金の支給対象となりますが、介護休業開始予定日の93日後から起算して6か月以内に労働契約が終了し、更新されないことが確実な場合は支給対象外となりますのでこちらも注意が必要です。

休業開始前2年間に所定の賃金支払い条件を満たす月が12か月以上あること

介護休業給付金を受給するためには・・・

休業開始日前2年間(*1)

賃金支払基礎となった日数11日又は時間数が80時間以上ある「完全月」(*2)

通算して12か月以上あること

の要件を満たしていなければなりません。

(*1)
上記2年の間に「疾病・負傷等やむを得ない理由」により引き続き30日以上「賃金の支払いを受けることができなかった期間」がある場合は、その期間を2年間に加算した期間(合計4年間が上限)を指します。

(*2)
ここでいう「完全月」とは、休業開始日の前日から1か月毎に区切ってさかのぼった各期間のことを指します。
満1か月ない期間については、たとえ賃金支払い基礎日数が11日以上又は時間数が80時間以上あったとしても「完全月」12か月以上のカウントに加えることはできませんので注意が必要です。

〔失業給付や高年齢求職者給付の受給資格取得に注意する!〕

過去に雇用保険の失業給付(基本手当)の受給資格を取得している労働者や、高年齢求職者給付金の受給資格を取得している労働者は、その受給資格決定日までの賃金支払い実績を上記の完全月12か月以上のカウントに含めることはできません。

つまり、上記の完全月12か月以上の基準は、失業給付等の受給資格取得日より後にある2年間において充足していなければなりません。

なお、失業給付(基本手当)を実際に受給していなくても、いったん「受給資格」を取得済である場合は、上記のルールが適用されますので注意が必要です。

〔休業開始日前2年の間に転職している場合〕

現勤務先のみでは受給要件を満たさないが、休業開始日前2年の間に離職歴がある場合は・・・


前職の離職日(雇用保険被保険者資格喪失日)から現職入社日(雇用保険被保険者資格取得日)の間に1年以上の空白期間が無いこと


前職の離職日以降に雇用保険失業給付(基本手当)の受給資格を取得していないこと

両方を満たした上で、休業開始日前2年間(*)に、上記11日又は80時間以上が12か月以上の条件を満たしていれば支給対象となります。

(*)
2年の間に「疾病・負傷等やむを得ない理由」により引き続き30日以上「賃金の支払いを受けることができなかった期間」がある場合は、その期間を2年間に加算した期間(合計4年間が上限)を指します。

介護休業は取得できても、給付金の支給対象とならない労働者がいる

介護休業制度は「育児介護休業法」により定められた制度です。
いっぽう、介護休業給付金制度は「雇用保険法」に基づき、雇用保険被保険者を対象として定められた制度です。

このため、介護休業制度は、介護休業給付金の支給要件を満たしていない労働者も対象として適用されることとなります。

よって、法的に介護休業は取得できるものの、介護休業給付金を受給できない労働者が生じることには十分注意しておきましょう。

その他支給対象外となる労働者

雇用保険の加入対象外となっているため受給できない労働者

以下の労働者は雇用保険の加入対象外となっているため、介護休業給付金を受給することはできません。

1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者

・通信・夜間・定時制の学生を除く学生労働者(*1)

・常時雇用者5名未満の小規模個人事業の農林水産業事業者(*2)の元で働き、雇用保険に加入していない労働者

(*1)卒業見込み証明があり、正式入社を前提に、一般労働者と同様に勤務している学生は雇用保険の加入対象となります

(*2)上記の個人事業者が従業員を雇用保険へ加入させるか否かは任意となっています

会社役員は介護休業給付金を受給できない

会社役員は、原則、介護休業給付金を受給することはできません。

会社役員には雇用保険が適用されず、日頃から雇用保険料も支払っていません。

また、育児介護休業法も適用対象外となっており、そもそも介護休業制度自体、利用することができません。

よって、仮に介護のために休業したとしても介護休業給付金を受給することはできません。

ただし、例外として雇用保険に加入している使用人兼務役員については、一般の労働者と同様、育児介護休業法が適用され、介護休業給付金についても受給することができます。

介護休業給付金申請~支給のタイミング

支給申請のタイミング

介護休業給付金の支給申請は、法定内の休業期間が終了した後に行います。

例えば3回に分けて休業した場合は、それぞれ分割して取得した法定内の休業期間が終了した後に申請を行うこととなります。

支給決定後、約1週間で給付金が入金されますが、支給決定までに時間がかかる場合もありますので、申請後に指定の銀行口座へ入金されるまでには、1カ月程度かかると見ておくのが無難です。

なお、法定内の介護休業期間(最長93日間)を超えて、介護のために法定外の休業をする場合は、法定内の介護休業期間が終了した時点で支給申請の準備を行いませんと、支給期限内に申請できなくなる恐れがありますので十分注意が必要です。(支給期限については後述いたします)

支給可否の判定は支給単位期間ごとに行われる

介護休業給付金の支給申請は、上記のとおり法定内の休業期間が終了した後に行いますが、その一方で、支給可否の判定は「支給単位期間」ごとに行われることとなっています。

この「支給単位期間」とは・・・

介護休業開始日から起算して1か月ごとに区切った各期間

のことを指します。

ただし、法定内の休業終了日を含む「支給単位期間」については、当該終了日までの期間とします。

例えば、開始日が4/25、法定の終了日が 7/15 であれば・・・

・ 4/25 ~ 5/24 の30日間
・ 5/25 ~ 6/24 の31日間
・ 6/25 ~ 7/15 の21日間

の3つ「支給単位期間」ごとに支給可否の判定が行われることとなります。

支給可否の判定内容

介護休業給付金は、以下①~③全ての要件を満たした「支給単位期間」に対して支給されることとなっています。

支給単位期間の初日から末日まで継続して雇用保険加入者(被保険者)であること

②支給単位期間中に就業した場合は、その日数が10日以下であること

なお、終了日を含む「支給単位期間」は、1か月未満となるケースがほとんどですが、この期間中に就業した場合も例外適用はなく、その日数が10日以下であれば支給要件を満たすこととされています。

ただし、終了日を含む「支給単位期間」中には、少なくとも1日「終日に渡り介護休業を取得した日(*)」が含まれていなければならないこととなっていますので注意が必要です。

(*)ここでいう「終日に渡り介護休業を取得した日」には、土日祝日等の会社休業日を含めることができます。

③支給単位期間中に支払日が到来し、かつ、介護休業した日のみを対象として支払われた賃金額*1)が、休業開始時賃金月額*2)の80%未満となっていること

*1)
時間外手当・精皆勤手当・通勤手当等も含めた全ての賃金総額を指します

*2)
休業開始時賃金月額 = 休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日 × 30日により算定されます。
なお、上限額:518,000円・下限額:86,070円(令和6年8月1日~)が決められており、毎年8月1日に改定が行われます。

支給単位期間中に離職(退職)した場合

支給単位期間の途中で離職(退職)した場合、当該支給単位期間は支給を受けることができないとされています。

ただし、介護休業給付金は休業期間が終了した後に申請を行うこととなるため、離職者を対象として申請することはできません。

よって、実務上、支給単位期間の途中で離職(退職)した場合は申請を行うことができず、受給することもできないことになります。

休業期間終了後に離職(退職)した場合

介護休業給付金は、介護休業を開始する時点で、介護休業終了後に離職(退職)することが予定されていた場合申請できないこととなっています。

よって、休業開始日よりも後に離職予定となり、休業終了後に職場復帰し勤務している労働者については申請対象とすることができます。

ただし、この場合も、離職後に申請を行うことはできませんので注意が必要です。

支給申請の期限

申請手続きは、原則、勤務先の会社を通じて所轄のハローワーク(もしくは電子申請により雇用保険事務センター)あてに行います。

支給申請期限は、原則・・・

休業終了日翌日から起算して2カ月を経過する日が属する月の末日まで

となっています。

ただし、休業期間が3か月以上に渡る場合は・・・

休業開始日から3カ月を経過する日の翌日を起算日として、その2か月後の日が属する月の末日まで

が申請期限となります。

介護休業は最大3回に分割して取得することができますが、分割して取得した場合は、それぞれの介護休業期間ごとに申請を行うこととなります。
(申請期限はそれぞれの休業終了日の翌日から起算して2カ月を経過する日が属する月の末日までとなります)

支給申請が正式に受理されてから1週間程度で、休業対象者が指定した銀行口座へ入金が行われますが、支給申請を行うタイミングが遅くなった場合には入金遅れることとなります。

この点は、休業を取得するご本人に対して、事前に伝えておきたいところです。

支給額について

支給額の算定方法

介護休業給付金の支給額は以下のとおり算定されます。

【支給単位期間が満1か月ある場合】

休業開始時賃金月額*(休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日 × 30日)× 67%

上限額:518,000円・下限額:86,070円(令和6年8月1日~)毎年8月1日改定

により算定されます。

【支給単位期間が満1か月ない場合】

休業開始時賃金日額休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日 )× 実際の休業日(*)× 67%

(*)土日祝日等の会社所定休日も含めます

により算定されます。

なお、上記の「介護休業開始前6か月間の賃金総額」とは・・・

休業開始日直前にある「賃金締切り期間」のうち、「賃金支払い基礎日数が11日以上」もしくは「賃金支払い基礎となった時間数が80時間以上」を満たす期間<=完全賃金月(*)>のみを6か月分集めてきて合計した金額

(*)
完全賃金月とは、満1か月全ての日数がそろった「賃金締切り期間」のことを指します。

1か月ない期間については、たとえ賃金支払い基礎日数が11日以上又は時間数が80時間以上あったとしても、「介護休業開始前6か月間の賃金総額」算定には含めませんので注意が必要です。

のことを指します。

介護休業給付金の「支給要件」は、休業開始日前日から1か月毎にさかのぼった「完全月」を基準として判定するのに対し、「支給額算定」は、休業開始日直前の賃金締切り日からさかのぼった「完全賃金月」を基準として算定が行われますので違いに注意が必要です。

日給制労働者の支給額

日給制の労働者については、上記の「休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日」(賃金日額と呼びます)の部分について、「休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 当該6か月間の賃金支払基礎日数 × 70%」との比較を行い、金額の大きい方を賃金日額として介護休業給付金支給額を決定する場合があります。

こちらは失業給付の日給制労働者に対する基本手当算定時に用いられる方法で、適用するか否かは申請先のハローワークが決定します。

具体的には・・・

・1週間の所定労働時間数が30時間以上
・上記6か月間の賃金支払基礎日数が125日以下

のいずれにも該当している日給制の労働者が対象となるようです。

なお、「時間給×総勤務時間数(賃金締切り期間中の勤務実績)」により毎月の賃金支給額を決定している場合も「日給制」として取扱います。